
スウェーデン野外生活推進協会のあゆみ
1892年に設立されたスウェーデン野外生活推進協会(Friluftsfrämjandet)は、130年以上にわたり「自然の中で学び、育つ」という理念を受け継ぎながら活動を続けています。
クロスカントリースキーの普及から始まった活動は、子どもたちへの自然教育へと発展し、現在では野外保育や野外教育、環境保全活動など幅広い取り組みへと広がっています。

1892年
「スウェーデン・クロスカントリースキー推進協会」として設立されました。
当初の目的はクロスカントリースキーの普及であり、「男らしいスポーツ ―― 先人たちの遺産」をモットーに活動を開始しました。その後、人々が自然の中で過ごすこと自体に大きな価値があることが認識され、野外生活全般へと活動の幅を広げていきました。

1938年
野外生活の対象に子どもたちが加わりました。
子ども向けの活動は急速に発展し、それまで行われていた青少年や大人向けのスキー・ハイキング活動を補完する重要な活動となりました。


1957年
事務局長ヨスタ・フロム氏によって「森のムッレ」が誕生しました。
森のムッレ教室は、自然と親しみながら遊び、学び、命を大切にする心を育てる活動として、スウェーデンを代表する子どもの自然教育プログラムへと成長しました。
1960~1970年代
都市化が急速に進む中、子どもたちが遊び、自然と触れ合える身近な森を守るための活動に積極的に取り組みました。
協会は地域の自然保全活動にも大きく貢献し、多くの森や緑地を守る成果をあげました。


1975年
協会名を現在の「スウェーデン野外生活推進協会(Friluftsfrämjandet)」へ変更しました。
新たな理念として
「一年を通して、すべての人に野外生活を」
を掲げました。
野外生活の価値も、身体を鍛えることだけではなく、
- 心
- 身体
- 自然とのつながり
を大切にする考え方へと発展し、人々のより豊かな暮らしにつながる活動へと広がっていきました。

1985年
リディンギョ市に、「I Ur och Skur(雨の日も晴れの日も)」最初の野外就学前学校「ムッレボーイ」が開校しました。
天候に関わらず毎日自然の中で過ごすという、世界でも先進的な野外保育がスタートしました。

1987年
3〜5歳児を対象とした野外活動プログラム
「森のクニュータナ教室」が始まりました。
子どもの発達段階に合わせた自然体験プログラムがさらに充実していきました。

1990年
1〜2歳児を対象とした
「森のクノッペン教室」が始まりました。
同時に、森のムッレの活動はスウェーデン各地の就学前学校にも取り入れられ、教育現場へと広く普及していきました。

1995年
「I Ur och Skur(雨の日も晴れの日も)」初の小学校が開校しました。
幼児期だけでなく、小学生も継続して自然の中で学び、成長できる教育環境が整えられました。


現在
スウェーデン野外生活推進協会は、子どもから大人まで、すべての人が自然の中で学び、楽しみ、健康に暮らせる社会を目指して活動を続けています。
また、活動の舞台となる身近な自然を守るための取り組みを続けるとともに、誰もが自然を楽しむことができる「自然享受権(Allemansrätten)」の理念を広く伝えています。
130年以上にわたり受け継がれてきた「自然の中で育つ」という考え方は、現在もスウェーデン全国で実践され、日本の森のムッレ教室にもその理念が息づいています。
日本の野外生活推進協会の主なあゆみ

1986年
・スウェーデンから里帰りした高見幸子氏が、地元の環境破壊を目の当たりにし、自然環境教育の大切さを痛感。スウェーデンで行っていたムッレ教室を、兄の高見豊氏に相談し、丹波新聞社に投稿。これがムッレ教室を日本に紹介するための最初の行動となりました。
・夏休みに高見幸子氏が娘と里帰りした際、小学生の希望者対象にストローバレ教室を実施し、とても好評だったため、丹波市の鴨庄保育園に森のムッレ教室を紹介することを検討します。
1990年
・丹波市の鴨庄保育園で実験的に森のムッレ教室が実施されました。
1991年
・高見幸子氏が日本初めての森のムッレリーダー養成講座を開始。日本で最初のリーダーが誕生しました。


1992年
・スウェーデンから講師としてマグヌス・リンデ、シーブ・リンデ夫妻、高見幸子氏を招き、第2回森のムッレリーダー養成講座を開催。
・リーダーの中から12名がスウェーデンへ行きリーダー研修を受講しました。
・スウェーデンの野外生活推進協会リデンギョ支部と姉妹提携を結びました。
1993年
・スウェーデンより7名の講師を招きリーダー養成講座を開催しました。

1994年
・森のムッレ教室の創始者ヨスタ・フロム氏とスティーナ・ヨハンソン氏、グン・ヤコブソン氏を招き、リーダー養成講座を開催しました。
・その後、毎年日本各地でリーダー養成講座を開催しています。


2000年
・スウェーデンより講師を招き、ステップアップ講座を開催しました。
・新潟支部が発足しました。
2001年
・スウェーデンの野外保育園、野外小学校よりそれぞれの校長、園長が来日し、日本との交流を深めました。
・スウェーデンより講師を招き、講師養成講座を行いました。
2002年
・第1回森のムッレ国際シンポジウムがスウェーデンで行われ、日本から9名が参加。本協会の会長である高見豊氏がヨスタ・フロム賞を受賞しました。


2003年
・スウェーデンよりカイサ・シェルストロム氏を招いてリーダー養成講座を行いました。
2004年
・スウェーデンよりリンデ夫妻を招いてリーダー養成講座を行いました。
2008年
・スウェーデンよりジル・ウェスターマーク氏、バートンカールソン氏、アンナ・フロム氏、高見幸子氏を招き、リーダー養成講座を行いました。
2009年
・高見豊氏がスウェーデンの野外生活推進協会の第100回総会に出席しました。


2012年
・森のムッレ国際シンポジウムが兵庫県で開催され、海外からやく30名が参加、交流を深めました。
2014年
・一般社団法人 日本野外生活推進協会(森のムッレ協会)へ法人化しました。
・ラトビアで森のムッレ国際シンポジウムが開催され、日本からも10名が参加しました。
2017年
・イギリスのウェールズで、森のムッレ国際シンポジウムが開催されました。
2018年
・スウェーデンより講師を招き、講師ステップアップ講座を行いました。


2020年
・コロナ渦でオンラインFIKAの開催を行いスウェーデンと交流を行いました。
2022年
・奈良の国際シンポジウム開催に向け、オンライン国際交流会を行いました。
2023年
・奈良県で国際シンポジウムを開催しました。スウェーデンをはじめ、フィンランドやイギリスなどの国からの参加者が来日されました。
2025年
・イギリスのマンチェスターで国際シンポジウムが行われました。スウェーデンや日本からも参加し、交流を深めました。
2026年時点で、全国各地で246回を越えるリーダー養成講座が毎年行われ、たくさんのリーダーが誕生しています。
事業概要
環境先進国スウェーデンで開発された乳幼児期から児童期までの心身の発達に応じた、五感で自然に触れて体験的にエコロジーを学ぶ環境教育プログラムを実践するべく、1992年に当協会が発足しました。
五感で体験的にエコロジーを学び、自然と関わることで、多様な社会問題を抱える子どもの心身のバランスと社会性を向上させるとともに、自然を保護するための賢明な判断のできる大人に育てる指導者養成とその活動支援等を目的としています。
主な事業内容
日本野外生活推進協会は、スウェーデン野外生活推進協会(Friluftsfrämjandet)とライセンス契約を結び、日本国内で幼児年齢別対応の野外環境教育プログラム「森のムッレ教室」を普及しています。
主な活動
- 森のムッレ教室の開催
- リーダー・講師養成講座、研修会の開催
- 教室運営や全国のリーダーへのサポート
- 教材・指導法の研究・開発・普及
- スウェーデン版プログラムの翻訳・日本版への開発
- 大学・企業と連携した授業や研修の実施
これまでムッレ教室に活動に関わった人
- 会員:約82,000人
- 支部:約300支部
- リーダー:約7,000人
- 会員の約半数が子ども
- 森のムッレ教室は1957年開始
- これまで約200万人の子どもが参加
日本野外生活推進協会の役割
日本とスウェーデンをつなぐ窓口として、
- スウェーデンの教育理念を日本へ伝える
- 日本の自然環境に合わせた教材・プログラムを開発する
- 全国で活動するリーダーを育成・支援する
ことを通じ、子どもたちが自然の中で学び、環境を大切にする心を育む活動を全国へ広げています。
社団法人 日本野外生活推進協会の構成員について
理事長 髙見 豊
理事 足立 邦明
理事 原田 優
理事 本莊 賀寿美
理事 小島 啓介
監事 君塚 昌俊
監事 中井 千晶
SDGsへの取り組み

SDGs(持続可能な開発目標)の始まりは、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催されたリオの地球サミットと言えるでしょう。その時、世界の国の代表が地球の持続可能な開発を構築するためのアクションプランに批准しました。アクションプランは、「アジェンダ21」と言われ、貧困、気候変動、環境等、さまざまな問題を扱いました。そして、「グローバルに考え、ローカルで行動を」がスローガンになりました。貧困や気候変動のようなグローバルな問題の解決を、自治体や個人の行動に繋げて解決しようとしたのです。
しかし、そのためには、自然の法則、自然循環といったエコロジーの理解が必要でした。そして、女性も子どもも意思決定に参画できることも重要視されました。将来の社会は変動する。環境に配慮したライフスタイル、持続可能な開発を考慮しなければならない。それゆえ、野外生活推進協会は、エコロジーを学び、自ら発見し考えるという民主的な教育方法を取り入れた「森のムッレ教室」に参加することで、子どもたちは、将来の準備をすることが出来ると考えました。そして、「アジェンダ21」は、ムッレの森から始まると発信しました。ムッレのメッセージ「自然を大切にしよう」は、今も重要なメッセージです。SDGsは、スウェーデンではアジェンダ2030と言われています。
SDGsも、アジェンダ21と同じく、ムッレの森から始まると考えます。
私たちは、「森のムッレ教室」を日本全国で実践することによって、17あるSDGs 持続可能な開発目標のうち、以下の4つの目標の達成に貢献する努力をします。

目標3.すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
森のムッレ教室では、大人と子どもたちは一緒に、身近にある自然に出かけます。自然ほど、優れた遊び場はありません。子どもたちの3つの基本的なニーズである。①運動をする②好奇心を満たす③仲間意識が満たされます。運動をするは、心身の発達に役立ちます。ストレスも解消でき、友達と一緒に過ごすことで仲間意識が育ちます。また、自然の中で、色々な自然現象を発見し、好奇心も満たしてくれます。ファミリームッレには、親子で参加します。それゆえ、あらゆる年齢のすべての人々に健康的な生活を確保し、福祉を推進することに貢献できます。

目標4.質の高い教育をみんなに
すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
ターゲット
4.7 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
「森のムッレ教室」では、子どもたちは、人類が依存している自然とエコロジーについて学びます。そして、持続可能なライフスタイルがどのようなものか、リーダーと一緒に実践の中で学びます。また、野外で遊ぶことは、ジェンダー教育にも貢献するということが最近の研究報告書で発表されました。

目標15.陸の豊かさも守ろう
陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
ターゲット
15.4 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。
「森のムッレ教室」では、子どもたちは、森の中の生物の多様性に感動をする機会が与えられます。同時に、森に住んでいる生き物に配慮することも学びます。ムッレのしっぽは、森の掃除をするためにあります。子どもたちは、ムッレの手助けをするために自然にゴミを見つけたら拾ったり、むやみに花を根っこから取ったりしません。また、森の動物を脅かさないために、大声を出さないように心がけます。
このように私たちは、幼少時代に、自分も動物であり、自然の中の歯車の一部であることの理解と自然の生き物に配慮する気持ちが養われると、大人になった時、自然の多様性の保全への行動につながると考えます。「自然、そこにあることさえ知らなければ、なくなっても寂しいと思うことはないし、それを保護することに対して興味を持つこともない」(シャスティン・エクマン)

目標17.パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
ターゲット
マルチステークホルダー・パートナーシップ
17.16 全ての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する。
「森のムッレ教室」の活動をしている団体は、全国に約50団体ありネットワークとパートナーシップを持って活動をしています。また、森のムッレの発祥のスウェーデン以外にも、「森のムッレ教室」を展開している国があります。それは、フィンランド、ロシア、ラトビア、ドイツ、ノルウェー、ウェイルズ、英国、スコットランドで、これらの国々の団体ともネットワークを持ってパートナーシップで情報交換や国際交流をして活動を広めています。今後、私たちは、「森のムッレ教室」を開発途上国にも、紹介していきたいと考えています。
